スキミング戦略・ペネトレーション戦略

企業が新たな市場に参入する際には、スキミング戦略とペネトレーション戦略というフレームワークによる戦略構築が便利です。スキミング戦略・ペネトレーション戦略とは、ターゲティングと価格に関わる事業戦略です。このフレームワークは、イノベーター理論を土台として考え方が整理されています。

 

スキミング戦略では、PLC(プロダクトライフサイクル)の黎明期において、流行に敏感なイノベーター層(マニア、オタクとも呼ばれる)をターゲットとして、高めの価格設定で収益を獲得します。市場の先端からもぐり込むため、「上澄み戦略」とも呼ばれており、一般的には、短期的に高い利益率をあげることができると言われています。

この戦略を採用する場合には、製品自体の市場認知度が低いため、単に価格を高くするだけでは売れず、テレビコマーシャルや雑誌広告など適切なマーケティング活動を並行して行うことが欠かせません。

電化製品が市場に登場する際、多くの場合、このスキミング戦略をとります。大々的なマーケティングを行い、非常に高価格ではあるものの、一部のマニアが購入するケースが一般的です。オーディオ機器、携帯電話等、多くのケースで見られます。

一方、ペネトレーション戦略は利益よりも市場シェアを優先する考え方であり、イノベーターからアーリーアダプターはもちろん、フォロワーまで幅広い市場セグメントをターゲットとします。利益を当初抑えることで、早期に量産体制に入り、それによりコストの低下が図られ、時間がたつことにより、利益が最大化されます。競争プレイヤーが多いPLCの成長期において、低い販売価格で一気に市場を押さえますが、利益が出るまで時間がかかるため、大企業に向いた戦略といえます。ただし、スタートダッシュによってライバルを抑え込むことが可能になり、参入障壁を築きやすく、しばしば有効な戦略です。

当たり前のことですが、価格を抑えようとするあまり、「安かろう、悪かろう」に陥ってはいけません。市場からの信頼なくして事業は成り立たないため、トヨタ自動車の「改善」のように品質維持を前提としたコスト低減施策を並行して実施することが重要です。

ちなみに今日、大胆なペネトレーション戦略で注目を集めている企業はソフトバンクです。同社は、ADSL市場やモバイル市場において圧倒的な低価格戦略によって世の中の話題をさらい、市場シェアを一気に拡大させました。















なお、最近では、こうした伝統的なマーケティング手法とは、まったく異なる価格戦略があちらこちらで見受けられます。

例えば、携帯電話を用いた無料ゲーム事業で成功したDeNA社の『モバゲータウン』が挙げられます。従来、さまざまな企業が月額100300円といったペネトレーション戦略を推し進めていたモバイルゲーム市場において、同社は突然、無料ゲームサービスを展開し、市場をあっという間に席巻しました。

その後、同サービスでは大規模なユーザー数を基盤として、インターネット広告事業やEC事業など全く別のビジネスモデルから大きな収益をあげています。

リクルート社の『ホットペッパー』も同様の事例です。雑誌を無料で大量配布することによって掲載店舗からの広告事業を成立させました。このように、ひとつの事業において価格破壊を起こしつつ、他の事業によって収益をあげる手法はさまざまなビジネスに適用可能です。

大きなビジネスチャンスを探している方は、従来のビジネスを無料化するとどのようなチャンスが得られるのか考えてみるとよいかもしれません。

 

最終更新 ( 2010/05/11 14:13 )