間違いだらけのアンケート設計



ビジネスにおけるアンケートといえば、消費者に向けた市場調査が思い浮かびます。それ以外にも、従業員の意識調査、セミナー後に行う満足度のアンケート、人事評価の材料となる360度調査など、アンケートを駆使する場面は多くあります。しかし、適切とは言い難いアンケートを目にする場面も少なくありません。今回は陥りやすいミスを指摘してゆきたいと思います。アンケート設計にはサンプリングや集計などの作業も含まれますが、ここでは質問票の作成のみを論点とします。

● 2つのことを同時に聞かない

悪い例:「○○ジュースは美味しくて、健康に良い」

上記にように2つのことを同時に聞くと、「美味しいけど健康に良くない」と思っている人や、「美味しくないけど健康に良い」と思っている人は、YESともNOとも答えられなくなります。

● 専門的すぎる用語を使わない

悪い例:「ブラックショールズ・モデルは有用な考え方である」

ごく普通のビジネスパーソンに上記の質問をしたとすると、そもそもブラックショールズ・モデルが何かを理解していないため、YESともNOとも答えられません。上記は極端な例ですが、その「気配」がするアンケート項目は珍しくありません。

● 恣意的に誘導しない

悪い例:「無差別の大量殺人は憎むべき犯罪です。あなたは麻原彰晃は死刑になって当然だと思いますか?」

上記のような誘導を避けるのは当然ですが、さらに悪質な場合は結果報告に「あなたは麻原彰晃は死刑になって当然だと思いますか?」の部分のみを表示するケースも見られます。これは誘導というよりも捏造に近い行為です。

● 二重否定を出来るだけ避ける

悪い例:「夜更かしは健康に良くないとは思わない」
良い例「夜更かしは健康に影響しないと思う」

二重否定の文章は、まずはそれを理解するのに戸惑う場合があります。さらにアンケートで使う場合は、YESとNOのどちらをつけたら自分の意見になるのかで、もう一度戸惑う可能性があります。他の言い方が出来る場合は、使わないようにしましょう。

● 心理と行動のどちらを聞きたいのかを自分で明確化する

パターンA:「私は早起きである」
パターンB:「私は6時より前に起きる」

一見すると定量的に聞いているパターンBが良いように思われますし、実際にその場合も多いでしょう。しかしアンケート設計の趣旨によってはパターンAが良い場合もあります。例えば朝6時半のテレビ番組を見てくれる可能性を探るのであれば、行動変数を聞いているパターンBが良いでしょう。しかし、例えば「早起きの人は何事にも積極的である」という仮説を立証したいのであれば、心理変数を聞いているパターンAが良いかもしれません。どちらを聞きたいのかを自分で明確化してから、アンケート項目を作成する必要があります。

● 適切に細分化する

パターンA:「テーマパークに行くのが好き」
パターンB:「ディズニーランドに行くのが好き」

仮にAにおいてYESの結果が出て、それをユニバーサルスタジオの人に見せたとしましょう。彼/彼女は喜ぶでしょうか。「テーマパークと言っても、うちのことなのかディズニーランドさんのことなのかわからない。このデータだけでは意味がない。」と言われそうです。

また仮にBにおいてYESの結果が出て、「休日の過ごし方」を研究している人に見せたとします。「私は、家族で食事、ごろ寝、スポーツといったものとの比較を望んでいるのです。ディズニーランドといわれても細かすぎて使い物にならないデータです。」と言われそうです。調査目的に応じ、対象の大括り/小分け具合を適切に設計しましょう。

ちなみに私は複数の講師が異なるセッションを分担する研修をやり、「講師のスキルは適切だったか?」という受講者へのアンケートをとられて困ったことがあります。YESと言われても自分の手柄かわかりませんし、NOと言われても「それはオレのせいじゃない!」と言いたくなります。

● 遠い記憶≠事実、遠い記憶≒心理

項目1:「あなたは今年、何度映画に行きましたか?」
項目2:「あなたは5年前、何度映画に行きましたか?」

この2つの結果を比べ、例えば「映画に行く頻度が減少してきている」と結論づけてはいけません。まず、項目1への回答は、ほぼ事実と言って良いでしょう。今年のことなら多くの人が正確に覚えています。しかし、項目2への回答は事実というよりは心理です。「2005年には映画に3回行ったと思う」などというデータなのです。項目1すなわち事実と、項目2すなわち心理を比べて経年変化を分析するのは意味がありません。

● モレを出来るだけ避ける

北海道旅行の魅力は何ですか(複数回答可)。
□ 景色が綺麗
□ スキーが出来る
□ その他(               )

上記のアンケートを実施したとしたら、「その他」に沢山のチェックがつき、「食べ物が美味しい」といった記述が集中することが予想されます。大規模な定量調査の前に、少人数へのインタビューなどを実施することで、項目の大きなモレを避けましょう。

● 選択肢のレベル感を揃える(MECEにする)

スマートフォンの購入意向を未購入者に対して調査するとし、以下の選択肢を用意したとします。

・購入したい
・価格が下がり付加サービスが充実したら購入したい
・NTTドコモが出すなら購入したい
・興味はない
・わからない

ここでは、購入意向の有無と、「価格」「付加サービス」「通信キャリア」という要素が混ざり合い、ダブリやモレが生じています。ロジックツリーを作成する際にMECE(ダブリなくモレなく)を意識するのと同様の配慮が必要です。

この他にも大項目から聞いてゆく(例:スポーツについて→格闘技について→ボクシングについて)、設問を意図的にシャッフルして惰性の回答を避ける、などの配慮が有効な場合があります。自分なりに工夫してアンケートの調査票を設計してみましょう。

最終更新 ( 2010/12/08 19:29 )