コンピテンシー

コンピテンシーとは、ハーバード大学の心理学者マクレランド教授が、学歴や知能レベルが同等な外交官の間で業績に差が出る原因を研究する中で発表された概念で、現在では一般的に「高い業務成果を継続的に生み出すための特徴的な行動特性」と解釈されています。

 

この概念は、現在は人事評価軸の一つとして活用されており、高い業績を上げている従業員の行動特性を分析し、その行動特性を他の従業員の評価基準とすることで、従業員全体の質の向上を図ることを目的としています。

従来の評価基準の一つである能力主義(資格や職能制度)は、人がやったことではなく、持っているもの(能力)を評価するものでした。これは、その亮力を持っていれば、将来それが望ましい成果につながるはずだという前提に立っており、ある意味で「投資型」のシステムと言えます。

このため、能力が高くても成果に繋がらない場合など、評価と会社への貢献度がリンクしないことが課題でした。

一方、実績主義・成果主義は、やったことを結果として評価するものであり「報酬型」のシステムと言えます。ここではプロセスを考慮しないため、将来も結果が出るとは限らないなど継続性の観点や、短期的・個人的な活動に走ってしまうなどの課題があります。

これに対し、コンピテンシーは、成果を出し続けるための「具体的な行動」で評価するため、評価と会社への貢献度がリンクし易く、投資型と報酬型のメリットを併せ持った概念として広まって来ました。

 

 

 

■コンピテンシーの設定方法

では、コンピテンシーとは、どのように設定するべきでしょうか。

コンピテンシーは、あくまでも成果につながる行動特性であるため、能力主義で重視されるような単なる知識・思考力・資格は含まれません。「~ができる」「~能力を持っている」ではなく、「実際に~をしている」ということが、重要視されます。

また、コンピテンシーは当然職種によって変わるものでもあり、自らの組織の戦略と整合性を図りながら設定する必要があります。

このため、具体的な設定のプロセスとしては、組織内の職種ごとに高い業績を継続的・安定的にあげている従業員に注目し、その成果やそこへ至る行動を掘り下げていくことによって行われます。

そして、このプロセスを通じて設定するコンピテンシーは、評価項目だけでなく、それを非常に具体的に表している行動レベルの定義まで作る必要があります。そのため、先程述べた通りに、具体的に「~している」・「~する」というレベルまで落とし込むことで、行動内容に具体性を持たせ、「~できる」という能力レベルの記述とも区別することが重要となります。

 

【具体例 】

 

コンピテンシー

定義

達成志向

高い目標や困難な状況下にあっても、粘り強く取組み、最後までやり遂げている

適応力

考え方や価値観の相違を受け入れ、善処することができる。環境の変化にも柔軟に対応している

リーダーシップ

組織の中で、メンバーのやる気を引き出しながら、目標に向かって取組んでいる

問題解決

常に課題意識を持ち、問題の本質を捉え、解決・改善のための行動を起こしている

関係構築

積極的に人に関わり、人と良好な関係を築いている

コミュニケーション

基本的な対応・応対マナーが実践されていて、相手の気持ちを理解し、また自分の意見をわかりやすく伝えている

自己認識

自分の強み、弱みを客観的に認識しており、弱みを克服できるような具体的なアクションを起こしている

 

 

■コンピテンシー設定上の留意点

 

前段ではコンピテンシーの設定方法と具体例を説明しましたが、コンピテンシーを設定する上では、気をつけなければならない点があります。

まず、コンピテンシーの分析プロセスにおいて、先入観を排除し客観性を確保する必要性があります。このため外部のコンサルタントを活用するケースも多く存在します。

また、対象とする社員が本当に適正かを検討する必要があります。自社の高好業績者が競合企業の高業績社の水準に達していない場合も考えられますし、そもそも高業績者の定義が組織の理念や目標に即しているかを検証する必要があります。このため、社内での綿密な議論や、外部コンサルタントの力が必要となります。

更に、設定したコンピテンシーが、過去に実績・成果を生んできたという要素に偏っていないかを検証する必要があります。あくまでも「継続的」・「安定的」に高業績を生み出すための行動特性であるため、今後も実績・成果につながるであろうという概念が抜けていないか確認する必要があります。

■報酬体系への活用

冒頭での説明通り、コンピテンシーは投資型と報酬型の要素をあわせ持っており、評価と成果がリンクしやすいメリットはありますが、報酬体系とどのように結びつけるかは、企業毎に検討する必要があります。

企業の戦略や風土によっては、行動特性というプロセスではなく、成果や業績によって報酬が決まるべきであるという考えもありますし、逆にプロセスが最重要である業態・職種ではコンピテンシーのみで給与を決定するという考えもあり得ます。

ただ、一般的に広まっているコンピテンシーを用いた報酬体系は、一部に活用するというものであり、その主なパターンは以下の通りです。

① コンピテンシーのみで基本給を決定、成果で賞与を決定

② コンピテンシーで基本給の一部(職能給等)を決定、成果で賞与を決定

③ コンピテンシーは給与決定の要素とせず、昇進・昇格の決定基準の一つ

(間接的に基本給に反映)

このように、能力評価の代替または補完として基本給や昇格に活用し、賞与では完全に業績評価を活用するケースが多いようです。

■考察

コンピテンシーは能力主義・実力主義の要素を併せ持つ優れた評価軸であると言えます。しかし、コンピテンシーを明確にすれば全社員が高業績者になるわけではありません。

本人への評価のフィードバックを行うことは言うまでもなく、本人のコンピテンシーを活かせる配置転換なども検討することで、組織全体の成果の向上を図ることも必要です。

また、現在の評価軸としてだけでなく、本人がどのような成長を目指すべきかの指標とも成りえるため、今後の成長に向けた改善や方向修正を検討することも重要となります。

どのような評価制度を用いるかは企業の戦略により異なりますが、どの企業においても、人事評価の目的に立ち返り、従業員の成長により組織の成果を高め、それを継続する仕組を構築することを忘れないようにしましょう。

最終更新 ( 2010/12/15 11:44 )