ワークシェアリング

ワークシェアリングとは、その言葉の通り、仕事(ワーク)を分け合う(シェア)ことです。一般的に「仕事」といえば、正社員が平日の9時から5時まで働くことがほとんどですが、一人あたりの働く時間を減らし、働く人数を増やそうというのがワークシェアリングの基本的な考え方です。

ワークシェアリングには、大きく4つの種類があります。



(1)雇用維持型(緊急避難型)
一時的な景況の悪化を乗り越えるため、従業員1人当たりの所定内労働時間を短縮し、社内でより多くの雇用を維持する。

(2)雇用維持型(中高年対策型)
中高年層の雇用を確保するため、中年層の従業員1人あたりの所定内労働時間を短縮し、社内でより多くの雇用を維持する。


(3)雇用創出型
失業者に新たな就業機会を提供するため、国または企業単位で労働時間を短縮し、より多くの労働者に雇用機会を与える。


(4)多様就業対応型
短時間勤務を導入するなど勤務の仕方を多様化し、女性や高齢者をはじめ、より多くの労働者に雇用機会を与える。

現在 、不況下での失業対策として、ワークシェアリングに対する期待は高まっています。一人あたりの労働時間を短縮し、多くの人間で仕事を分け合うことにより、失業者の数を減らそうというのです。今議論されているのは、上記「(1)雇用維持型ワークシェアリング」になります。

今までは不況になって人件費を削減しようとする場合、リストラによって人員削減をしてきましたが、人員削減をせずに各従業員の仕事を一律に減らすことによって賃金を削減すれば、リストラをしなくても人件費の削減になるという発想です。まさに雇用を「維持する」ためのワークシェアリングです。景気が悪い期間しばらくの間、解雇をせず、皆が一律に賃金を減らして痛みを分かち合おうという考え方です。

一見すると、誰かに痛みを押し付けるのではなく、皆で痛みを分かち合う発想は、日本人には美徳に思われ、ワークシェアリングに対する反発はあまり起きていません。

ただし、実際には、日本においてワークシェアリングは定着していません。ワークシェアリングには、痛みを分かち合うというメリットもありますが、デメリットがそれ以上に大きいためです。

デメリットの1つ目は、導入企業の負担が大きいことです。企業は、社員を雇用する際に、日々かかるコストがあります。

たとえば、手当です。交通費、家族手当、家賃等、会社によってさばざまですが、日本の企業には多くの手当が存在します。また、雇用保険、社会保険等があります。これらは、1人雇えば、1人分、2人雇えば2人分かかります。ひとつの仕事を2人で担当した場合、これらのコストは2倍かかることになります。これは明らかに、企業から見ると負担が増加していることになります。これらを解決するには、法律が整備をされる必要があり、短期的に解決される問題ではありません。

2つ目は、仕事の効率低下です。仕事を効率的に行うには、ある程度の熟練度が求められます。1人当たりの労働時間が短縮されると、それだけ仕事の効率は落ちます。そのため、企業から見ると仕事の効率が低下したことになり、コスト高になってしまいます。そのため、ワークシェアリングが導入される仕事は限られると思われます。特定の工場のライン職など、熟練度がそれほど求められない仕事になるでしょう。

3つ目は、労働者側の警戒感です。ワークシェアリングの導入が検討されようとしている企業の社員は、ワークシェアリングが賃金引き下げの口実に使われることを恐れています。実際問題として、現在(2009年3月)、ワークシェアリングを声高に唱え始めているのは、企業の経営者側(特に日本経団連)であり、労働者側ではありません。元来、日本企業では、夜遅くまで、残業することが当たり前になっている企業が多く、サービス残業も行われてきました。それなのにもかかわらず、時間短縮を口実に、賃下げがされてはたまりません。(時間短縮で給与カットといっても、相変わらず、残業させられる可能性すらあります。)

また、日本企業のここ20年間の企業付加価値の分配を見ると、大手企業は労働分配率を低下させてきました。資本分配率(株主配当、内部留保及び役員報酬)が上がり続け、配当金や役員報酬は倍増しています。企業が将来のために蓄積している内部留保は戦後最大の額に達しています。この状態の下で労使が満足するワークシェアリング制度を作るためには、労働の分配率を下げない(あるいは最低維持する)点で合意することが先決問題です。

このように、実際にワークシェアリングを導入するには、数々の問題があります。法的な部分に関しては、政府が積極的に変更をする姿勢を示しているため、いずれ整備されるでしょう。

しかし、実際に導入される際には、ライン労働者の賃下げの口実にされるのではなく、長期的視野に立ち、企業のプラスになるかどうかをしっかりと確認しなくてはなりません。

最終更新 ( 2010/05/11 14:38 )