フリー ~〈無料〉からお金を生み出す新戦略~

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【書籍データ】

書名:フリー ~〈無料〉からお金を生み出す新戦略~

著者:クリス・アンダーソン

出版社:日本放送出版協会

価格:1,890円(税込み)

http://www.amazon.co.jp/dp/4140814047/

【要約・解説】

本書は〈フリーミアム〉という無料を前提とした新たなビジネスモデルを提起したクリス・アンダーソンの最新作です。著者はアメリカの『ワイアード』誌編集長であり、前作『ロングテール』は世界的ベストセラーになりました。

さて今日、私たちはオンライン上のさまざまなサービスを〈無料〉で利用することが当たり前になりつつあります。

グーグルドキュメント(ドキュメント作成)、ユーチューブ(動画配信)、スカイプ(インターネット通話)、フリッカー(画像共有)、ファイアフォックス(ウェブブラウザ)、フェイスブック(SNS)など例を挙げれば、枚挙にいとまがありません。

本書では、オンライン上のサービスが次々と無料化していく要因を次の3点にあると考えています。

(1)テクノロジーの進歩

現在、オンラインビジネスを支えるテクノロジーであるコンピュータの情報処理能力とデジタル記憶容量と通信帯域幅に関するコストは、どれもが長いあいだ、3重の相乗効果を上げながら下がり続けています。

私たちはユーチューブでスムーズな動画を無料で見ることができるのは、圧倒的なペースで限界費用がゼロに向かっているためです。

(2)最大化戦略

最大の市場にリーチして、大量の顧客をスピーディにつかまえるには、サービスの無料化が最良の方法であり、グーグルのCEOであるシュミットはこれを「最大化戦略」と呼び、こうした戦略が情報市場の特徴になると予測しています。

(3)ネットワーク効果

インターネットでは経済学者のいう「ネットワーク効果」がパワーを持ちます。

参加者同士が簡単にウェブ上でのコミュニケーションをとれるので、先行者のあとを追いかける群集行動(横並び行動)が生まれやすく、どのセクターでも一位の企業と二位の企業以下の差が大きくなります。

グーグルなど革新的な企業は、これら3つの要素をオンラインビジネスの本質と見抜き、サービスの無料化は可能性ではなく、時間の問題ととらえました。その結果、私たちは多くのサービスをフリーで利用する恩恵を享受しています。

ただし、各サービスプロバイダは〈無料〉によって多くのユーザーのかき集めることに成功したとしても、それだけではビジネスになりません。筆者は〈無料〉から収益を上げる4つのビジネスモデルを示しています。

《1》直接的内部相互補助

古典的なマーケティング手法としてのビジネスモデルです。

携帯電話をタダであげて、月々の使用料をとる。コピー機をオフィスに無償で設置して、インクを売り続ける。原価割れの特売品セールを開催して、通常価格の別の商品を売る。

このモデルでは、顧客はあるものを無料で受け取りながら、結局のところ、他のものをついでに買う際に財布を取り出すことになります。

《2》3者間市場

テレビ、ラジオ、新聞などのメディアでよくみられるパターンです。

視聴者や読者が無料でサービスを利用できるのは、広告主がコストを負担しているからです。企業はその代わりに広告を消費者に届けることでプロモーションを支援します。

ただし、一見するとサービスは完全に無料のようですが、企業のマーケティング費用は商品の代金に上乗せされた形で消費者が支払うことになります。

《3》フリーミアム

(無料ユーザーが撒き餌かつ潜在顧客)

広告を払って顧客を集めるのではなく、無料にすることで集める(媒体化)。

それが成功につながる。

プロモーションが効かなくなっている側面もあるのでは。顧客の価値観の多様化。

無料の基本サービスで多くのユーザーを集め、有料プレミアム版で利益を稼ぐビジジネスモデルを指す造語です。ウェブにおけるビジネスモデルとして一般的といえます。

スカイプはコンピュータ同士の通話は無料ですが、コンピュータと電話間は有料ですし、フリッカーは保存容量を追加する際に料金がかかります。

なお、オンラインサイトにおける有料ユーザーの理想的な割合は5%とされています。有料ユーザーが5%を超えている場合には潜在顧客を取り逃がしているリスクがあり、5%を下回っている場合には無料サービスが充実しすぎていると考えられています。

《4》非貨幣市場

対価を期待せずに、誰にでも無償で提供されるサービスを指します。

ウィキペディアに1200万項目が掲載されているのを見ると、金銭以外にも人を動機づけるものがあると分かります。利他主義は以前から存在していましたが、流通コストがかからないウェブとともにユーザー間の共有(シェア)は大規模に発展しました。

シェアをうながすのは、評判や関心であり、それよりは目立たないが、表現、喜び、善行、満足感です。募金があつまる。そもそも無料なのに、金を払う人がいる。価値交換ではなく、応援する人が出てくる。

このように、無料でも利益をあげるビジネスモデルはあります。

著者は「無料は魔法の弾丸ではない。無料で差し出すだけでは金持ちにはなれない」と警鐘を鳴らしながらも、フリーによって得る注目や関心をどうすれば金銭に変えられるのか創造的に思考することを促しています。

また、ビジネスの機能がデジタルの世界では、日を追うごとに各ビジネスのリスクは小さくなっていることから、近い将来、企業文化は「失敗するな」から「早めに失敗しろ」に変わらざるを得なくなることも予測しています。

【我々の考察】

テクノロジーの進歩は、さまざまな産業の構造改革を迫っています。

特に、オンラインでの音楽コンテンツの不正コピーは、いかに法律やコピー・コントロールで制限しようとしても一向に収まる気配がありません。多くのミュージシャンがこうした現状を嘆いていますが、オンラインはマーケティング手段と割り切って無料で楽曲を配信するミュージシャンも登場しています。

ミュージシャンのレディオヘッドは自分たちの音楽アルバムのダウンロード価格を購入者自身につけさせる実験を試みました。当然、お金を払わない人もいましたが、20ドル以上払う人もいて、平均価格は6ドルに落ち着きました。最終的には、それまでのアルバムの売上収入を超える結果となり、多くの業界関係者をあ然とさせました。

また、驚くことに、ダウンロード開始から2ヶ月後にCDを発売すると、全米と全英チャートで1位となり、iTunesの有料ダウンロードランキングでも1位になりました。

更に、アルバム発売後のライブツアーは同ミュージシャンの過去最大規模になり、120万枚ものチケットを売ることに成功しています。ファンが増えたことによるマーケティング効果が多方面に現れたといえます。

彼らはオンラインの楽曲の不正コピーは避けられないと受け入れることで、ビジネスモデルを再構築したわけです。構造変化を嘆いているばかりでは、状況は何も変わりません。

また、本書では、オンラインビジネスでは、マネジメントスタイルを変える必要があるとされています。

例えば、雑誌の出版社は「限られた紙面(稀少)」と「ページがほとんど無限にあるオンライン版(潤沢)」では、掲載記事の判断に異なったアプローチが求められます。テレビの放送枠(稀少)とユーチューブ(潤沢)も同じです。

ウェブの場合には、ジャーナリスト(プロ)だけでなく、一般ユーザー(アマ)がいくら記事や動画を投稿してもページが足りなくなることがありません。一方、雑誌の紙面やテレビの放送枠の場合にはミスを犯しても取り返すにはコストがかかりすぎることもあり、トップダウン型の意思決定が必要です。

















実際には、多くの企業が「稀少」と「潤沢」の両方を取り扱うことになるため、マネジメントスタイルはどちらがよいと一概に言うことはできず、自分たちなりのやり方を模索しなくてはならないでしょう。

とはいえ、爆発的なスピードで成長を続けるオンラインを無視して旧来型のマネジメントに固執していては、音楽業界のように産業の構造改革の波に置いていかれることになりかねません。やはり、筆者の言うように失敗を恐れずにチャレンジが必要といえそうです。

 

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