競争の戦略

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【書籍データ】競争の戦略

著者:MEポーター

訳者:服部照夫 他

出版社:ダイヤモンド社

価格:5,631円(税別)

http://www.amazon.co.jp/dp/4478371520/?tag=yahhyd-22&hvadid=50980091541&ref=pd_sl_88vg0zmg23_e

 

 

本書は20世紀を代表する経済学者であるポーター氏が、ハーバードビジネススクールで教鞭をとるかたわら、企業がどのような経営戦略をとるべきか、その理論を10年間に渡って研究をし、その成果についてまとめた書物です。ポーター氏は本書の中でフレームワーク「5FFive Forces)」を発表し、それが、現在も企業が経営戦略を構築する際のベースとなる考え方として、脈々と生きています。

本書がアメリカで刊行されたのが1980年、日本で刊行されたのは1982年と、約25年たった現在でも増刷が重ねられているビジネスパーソンのバイブル的書物です。

本書が書かれた1980年代はアメリカが日本との競争で劣勢にたち、危機感を持った時代でした。ポーター氏自身も1983年にはレーガン政権時代に、産業競争力委員会の戦略委員会の議長を務めました。その後、アメリカはIT革命と時を同じくして経済発展をとげますが、そのベースには、ポーター氏の競争の戦略の考え方があったと言われています。

ポーター氏は冒頭で、本書の狙いを大きく3つあげています。

①経営者が自分の置かれた競争環境を正しく理解する

②その環境が将来、どのように変化するか正しく予測する

③強固な市場地位をもたらしてくれる競争の仕方を学ぶ

ポーター氏は、本書の目的は、上記についての助言をすることであると書いています。このように、ポーター氏が本書の対象読者としたのは、一般的なビジネスマンというよりも、会社経営者または、その部門で専門的に働く人であるため、文章は難解で、一部わかりにくい部分があるのも事実です。そのため、本書をわかりやすく解説した数多くの入門書が発売されています。難解な部分もあるため、予備知識のない方は、いきなり本書を手にするよりも、入門書から入ることをお勧めします。

本書は大きく3つの構成に分かれています。

まず1つめが「①競争戦略のための分析技法」です。作者は、業界には5つの競争要因があり、それらが、自社のとるべき戦略にどのような影響を与えるかをまず論じています。

次が、「②業界環境のタイプ別競争戦略」です。ここでは、①で学んだ手法を活用して、具体的に競争戦略を作り上げる方法を説明します。業界の集中度、成熟度などの違いを反映させた上で、どのように戦略を構築していくべきかを述べています。

最後が「③戦略デシジョンのタイプ」です。ここでは、戦略決定のタイプを洗い出し、それについて説明をしています。

それではまず、「①競争戦略のための分析技法」について説明します。

作者は、自社の競争戦略を構築する際には、自社とその外部環境との関係をしっかりと見ることが重要であると述べています。外部環境は非常に広く、多様ではあるものの、その中で最も大切になるのが、「自社が所属している業界」であると述べています。もちろん、業界外の要因も存在しますが、それは業界のすべての企業に影響するわけなので、外部要因に対する処理能力の差で解決できると考えました。

そして、業界内で競争が激化する、沈下する、といった事象は、個別の企業の行動が真の原因なのではなく、その背景にある5つの要因によってもたらされると考えました。これが、有名なフレームワーク「5F」です。

この5つの要因は時として「競争相手」になると作者は主張しています。業界の競争は、既存の競合だけが対象なのではなく、広い意味で、5Fと敵対的な関係になりえるうるため、これらを「競争相手」と呼んでいます。そして、5つのうち最も強い要因が業界の競争の激しさと収益率を決定します。この第一要因は業界によって異なります。そのため、業界ごとに分析することが必要です。そしてその際は、短期的な要因よりも中長期的な本質を見定めることも重要であると述べています。

それでは、それぞれ、5つの要因をみていきます。

 

 

 

 

<新規参入>

その業界に新規参入が起こると、かなりの経営資源が新たに投入されることになり、価格が低下するか既存業者のコストが高騰するかして、既存業者の収益が低下します。この場合の新規参入とは他社の買収という手段によって、他のマーケットから業界へ参入するという手段が取られることもあります。この新規参入がされるかどうかは、参入障壁の高さによります。参入障壁を作る要因は以下の通りです。

主な参入障壁を作る要因

 

規模の経済性がはたらくか

生産コストの低廉化、作業スキルの効率化、共通コストの利用(有形・無形)、業界の垂直統合

製品差別化ができるか

どれだけブランド認知があるか

巨額の投資が必要か

巨額が必要であれば新規参入は減る

仕入先を変えるコスト

他の商品・サービスに切り替えた時に発生するコストの大きさ

流通チャネル確保の難易度

新規参入業者は必ず流通チャネルの確保が必要となる

規模とは無関係のコスト面での不利

独占的なテクノロジー、原材料を有利に入手、立地にめぐまれている、政府の助成金、作業の習熟

政府の政策

許認可制度

 

 

 

 

<既存競争業者の敵対関係>

既存の競争業者間の敵対的関係は、価格競争、広告合戦、新製品の導入、サービスや保証条件の拡大といった形で表れます。多くの場合、1社による競争行動はすぐに他社に伝わり、報復行動につながります。そのため、同業社はお互いの行動のいかんによって行動する関係(行動と反撃)という関係にあります。既存競争業者の敵対関係が起きるのは以下のケースです。

 

同業者の数が多すぎる

他社を出し抜こうとするプレーヤーが増える

結果として不安定が生まれる

業界の成長が遅い

少しでも市場シェアを高めようと競争激化

成長が早ければみな儲かるから問題なし

固定コスト、または在庫コストが高い

仕入れコスト率が高いと、キャパシティいっぱい作る

差別化困難、買い手を変えるのにコストがかからない

価格とサービスの競争が生まれる

血みどろの争いが生まれることも

小刻みにキャパシティを増やせない

一気に供給が増え、値下げが永続的にくりかえされる

競争業者がそれぞれ異質な戦略を持つ

同業者がお互いの意図を正確に読めなくなる。業界ルールが作られない

戦略が良ければ成果が大きい

(収益は二の次)

その市場で成功すること自体が目的となっている企業がいる場合、市場が錯乱する

撤退障壁が高い

撤退障壁が高いと、業界の過剰キャパシティが終わらず、業界の収益率が低下する

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

<代替製品の圧力>

業界内の全ての企業は代替製品を生産する業界と、広い意味で競争をしつづけています。代替製品は、代替品の業界の企業が適正利益をあげられる価格に上限をおくために、自業界の潜在的利益を抑える可能性があります。
代替製品を探すことは、現在の製品と同じ機能を果たしうる他の製品を探すのと同様です。そして、代替製品の脅威に晒された場合には、業界こぞっての共同行動をおこすしかありません。

その中でも特に注意をしなくてはならない代替品は、

①現在の製品よりも価格対性能比が良い商品

②高収益を上げている業界によって生産されている製品

の2つです。①はもちろんのことですが、②に注意が必要です。②の商品はちょっとした改良が加えられて、その業界の競争が激化し、値下げがおこるものなら、その企業が急速にこちらの業界への錯乱行動を起こすおそれがあるためです。

<買い手の交渉力>

買い手は、値下げを迫ったり、高品質、高サービスを求めることがあり、それによって、企業は収益性が下がります。以下のような場合、買い手の交渉力が増します。

 

買いが寡占化している

買い手のほうが立場が強くなる

買い手の購入する製品が、買い手のコストまたは購入物全体に占める割合が大きい

選択に労力やコストを費やしたうえで、気に行った製品価格のものを購入しようとする

買い手の購入する商品が差別化されない

供給業者同士を競い合わせる

取引先変更コストが低い

買い手の交渉力が強くなる

収益が低い

コストを抑えようする

長い目で業者を育てる意識がない

買い手が川上統合に乗り出す姿勢を示す

脅しになるだけでなく、コストに関する知識が増え、交渉の助けになる

売り手の製品が買い手の製品やサービスの品質にとってほとんど関係がない

買い手製品の品質が大きく左右される場合、価格にうるさくなくなる

買い手が十分な情報を持つ

需要、市場価格、原価コスト等を知られていると情報不足の場合よりも、買い手の交渉力が増す

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

<売り手の交渉力>

供給業者は売り手に対して、価格を上げる、品質を下げる、といった脅しをかけることで競争力を高められます。それは以下のようなケースの場合、特に強く現れます。

 

売り手の業界が寡占。買い手業界よりも集約体制

価格、品質、取引条件等すべての面で強力な力を発揮されてしまう

買い手が重要な顧客ではない

交渉のテーブルについてもらえない

買い手の事業にとって重要な製品の仕入れ品となっている

自社の製品にとって重要なものであればあるほど、供給業者の立場は増す。特に備蓄不能な場合は顕著

差別化された特殊商品であり、他の製品に換えると買い手コストが増す

供給業者同士を競合させられず、交渉余地がなくなる

供給業者が川下統合に乗り出す姿勢を見せる

購入条件の交渉が成り立たない

 

 

 

 

 

 

 

 

 

このように、業界の競争を左右する要因、その理由を突き止めた上で、企業は防衛可能な地位をつくり、競争相手に打ち勝つ戦略を取るべきであると述べています。そのための戦略は、以下の3つがあると作者は述べています。

①コストリーダーシップ

②差別化

③集中

ときには2つ以上を主目的にしてうまくいくこともあるものの、どれか1つにしぼって実行すべきであると作者は述べています。

それでは、それぞれを3つの戦略を見ていきましょう。

①コストリーダーシップ

経験曲線の理論にのっとり、効率のよい規模の生産設備を用意し、経験をふやすことでコスト削減を目指すという規模の経済で勝負する方法です。そのためには、R&Dやサービス、広告のような削減可能なコストを最小限に切り詰める必要があります。これにより、強力な競争要因が表れても、ある程度の収益を確保できます。また、規模が拡大することで、買い手や売り手に対する影響力も強くなります。

②差別化

2つ目の戦略は自社の製品やサービスを差別化して、業界の中でも特異だと思われる何かを創造する戦略です。差別化には、イメージの差別化やテクノロジーの差別化、製品特徴の差別化、サービスの差別化、販売チャネルの差別化など、いろいろな方法があります。差別化によりマージンが拡大することで、他の競争要因との戦いに有利にます。

③集中

最後に挙げる戦略は、特定の買い手グループや製品の種類、特定の地域市場といった企業の資源を集中する戦略です。特定のターゲットのニーズを意識することで、差別化や低コストが達成できたり、両方とも達成できたりもします。

この戦略は市場全体からみれば、低コストも差別化も実現できないものの、狭く絞られた市場ターゲットだけについてみると低コストや差別化が実現されます。

3つの基本戦略概念図

 

 

当社独自の見解

5Fの考え方は非常に有益です。業界を分析するには、まず5Fで考えることで、多くの場合、抜けもがなくなり、有益なフレームワークといえます。但し、難点は「どうやって業界を捉えるか」という点にあると思います。作者は、「業界の定義」など、どこに線を引くかの選択の問題にすぎないと言い切りますが、実際にこのフレームワークを使おうとすると、その線引きに迷い、作業に戸惑うこともあるかもしれません。また、業界の定義によっては結論が異なることもあり得ます。まずは、いろいろな線引きで数多く5Fのフレームワークで分析することが求められるでしょう。

また、本書の中では、3つの戦略といわれていますが、実際には、「セグメンテーションの範囲」と「4Pの中の重点項目」といった方が、実際にはわかりやすいと思われます。というのも、集中とは「特定のセグメントに絞ることである」と言っているものの、そのセグメントに何をするか、もまた重要だからです。

以上

 

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