ザ・プロフィット

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【書籍データ】

書名:ザ・プロフィット

著者:エイドリアン・スライウォッキー

出版社:ダイヤモンド社

価格:1600円+税


【解説・要訳】

「インダストリー・ウィーク」誌において、ドラッガー、ポーター、ゲイツ、ウェルチ、グローブとともに「経営に関する世界の六賢人」に選ばれたエイドリアン・スライウォッキーが、世の中の利益モデルを類型化してまとめたものです。

 

2002年の刊行のため、WEBに関する利益モデルについては、いささか物足りませんが、古典的モデルから経営者の資質に関するモデル、BtoBからBtoCまで幅広い利益モデルを取り上げています。

この本では、23の利益モデルが小説仕立てで紹介されています。若いスティーブが賢人チャオから利益モデルを1つずつ教わるストーリーになっており、小説内では、週1回から隔週のペースで授業が行われ、それに合わせた宿題・課題図書も提示されます。読者も、主人公スティーブと同じように、週に1章ぐらいのペースでゆっくりと読むと学びを深めることができるでしょう。

代表的な利益モデルとして、以下の23種類があげられています。

(1) 顧客ソリューション利益モデル

時間とエネルギーを注いで、顧客について知っておくべきことをすべて知る。そして、その知識を顧客固有のソリューションの開発に活かして利益をあげるモデル。短期の損失には目をつぶり長期の利益を実現する。

例)IT業界におけるコンサルティング型ソリューション提供

(2) 製品ピラミッド利益モデル

プレミアム商品と低価格帯商品により製品ピラミッドを構成する。

低価格帯商品を販売することで、他 社がもっと安い価格で市場シェアを奪う可能性を回避する。そのうえで高付加価値商品を独占した顧客に販売することで利益をあげるモデル。

例)バービー人形<アクセサリー・他の人形<コレクター用高級人形

(3) マルチコンポーネント利益モデル(コンポーネント=ビジネスの構成要素を意味する)

同じ顧客に対して、購買機会に応じて同じ製品の販売価格を変えるモデル

例)コーラ(自販機・レストラン・スーパーで販売価格が違う)

 


(4) スイッチボード利益モデル

 

ビジネスに必要な要素をパッケージ化・組織化することにより、商品性および影響力を向上させて販売する利益モデル。マッチングビジネスで力を発揮する。

例)タレント・脚本・制作会社のつなぎこみをするタレントエージェント

(5) 時間利益モデル

新製品を開発しても競合他社に模倣される商品特性を持つ場合に、可及的速やかに利益回収するために市場浸透・回収プロセスをシステム化する利益モデル。

例)半導体・金融商品

(6) ブロックバスター利益モデル

数点の大ヒット商品(ブロックバスター)が利益を支える業界の利益モデル。ブロックバスターの開発にリソースを集中するためのマネージメントシステムを運営することにより利益が向上する。

例)製薬開発、映画

() 利益増殖モデル

キャラクター、ストーリー、技術といった資産を様々な形式で繰り返し再利用することにより、コストの低減・事業成功可能性を向上させる利益モデル。

例)ホンダ(エンジン・モーター)、ディズニー(キャラクター)

() 企業家利益モデル

徹底した倹約精神、明確なコミュニケーション、スピード、挑戦、仕事を面白がるといった企業家精神を持ったリーダーが情熱を持って取り組むことにより生まれる利益

例)サムウォルトン、ジョンヒューイ(ウォルマート創始者)、本田宗一郎

() スペシャリスト利益モデル

業界を知り尽くしたスペシャリストを揃えることで、ナレッジから生まれる低コスト化・業界内高評価による価格優位性・稼働率向上・ソリューション横展開・新商品開発の頻度向上がもたらす利益モデル。

例)EDS、ウォレス、ABB、弁護士ファーム

(10) インストール・ベース利益モデル

ハードウェア販売では利益を狙わず、継続的に購入する消耗品で利益をあげるモデル。

ハードウェア販売では買い手に選択権があるが、消耗品販売では売り手に主導権が移ることによりモデルが成立する。

例)コピー機、かみそり、ポラロイドカメラ

(11) デファクト・スタンダード利益モデル

業界の主導権を握ることで、マーケットの動きをリードして予期せぬコストなどを回避できる。また、顧客が基盤共有のため、他の顧客に自社商品を広げてくれる等の優位性により得られる利益モデル。

例)マイクロソフト、オラクル

(12) ブランド利益モデル

ブランドを確立することにより、価格プレミアムを成立させる利益モデル。

例)コンパックPC、ナイキ

(13) 専門品利益モデル

ニッチ向け専門品により収益をあげるモデル。

例)精製化学製品、染料、特殊用紙、専門食品

(14) ローカル・リーダーシップ利益モデル

ターゲットエリアに重点出店することにより、同地域内での絶対的優位性を確保し(仕入れ価格低減、リクルート・宣伝費の効率化・プライシング)、競合を退出させることにより利益を受けるモデル。

例)スターバックス、ウォルマート

(15) 取引規模利益モデル

大口取引を獲得することで、利益率を高める利益モデル。ただし、大口の取引を獲得するためには、関係性の構築が必要であり、取引当初は赤字になる可能性もある。

(16) 価値連鎖ポジション利益モデル

バリューチェーンの中のコントロールポイントを支配することで利益を上げるモデル。

例)インテル、マイクロソフト(利益がほとんど存在しないパソコン業界でサプライヤーとしてコントロールポイントを押さえて利益を上げている例)

(17) 景気循環利益モデル

コスト削減等により損益分岐点を下げることで、販売量の増減の影響を最小限にして、コンスタントに利益を出す利益モデル。もしくは、価格変動に合わせて市場価格よりわずかに高い価格設定をすることで利益を生み出すモデル。

例)トヨタ、ユニバーサルケミカルズ

(18) 販売後利益モデル

ある製品を購入した後に発生するフォローアップ製品やアフターサービスから生まれる利益。購入者の選択肢が少ないため、価格感応性が低く高い利益を生み出すことが可能となる。

例)PCの追加メモリ、自動車保険など

(19) 新製品利益モデル

プロダクトライフサイクルにより、時間を横軸と利益を縦軸においた場合の相関は、パラボラ型(半円型)となる。利益量がピークになった段階で、投資を最小限にして、利益を最大化することを狙う利益モデル。

例)車、テレビなど

(20) 相対的市場シェア利益モデル

相対シェアを大きくして規模の経済を働かせることで、コスト削減・購買力向上・優秀な人材確保を可能とするモデル。その結果、利益変動性リスクも小さくなる。

現在ではシェアをおさえていなくても、バリューチェーンリーダーやデファクト・スタンダード保持者が同様のポジションを抑えている。

例)GE(ジャックウェルチのプロダクトポートフォリオ)

(21) 経験曲線利益モデル

経験(生産量)が増えるにつれて、熟練により1単位あたりの費用が低減し利益を生み出す。しかし、コストマネジメントに集中しすぎると、業界外から来る変化に対応できずに市場退出を迫られる可能性もある。

(22) 低コスト・ビジネスデザイン利益モデル

ビジネスモデルの転換が5,6年で起きており、先を見通し早くから新しいビジネスデザインを用意することにより、ビジネスモデル転換に対応する。

(23) デジタル利益モデル

ITを活用による収益性の向上。コールセンターコストの削減、顧客がWEBからオーダーすることによる在庫リスクの低減など。

例)デルコンピュータ

【我々の考察】

この本の優れているポイントを2点あげます。

まず、1点目は経験を積んだコンサルタントである筆者が、様々なアプローチ方法(フレームワーク)を踏まえたうえで、特に実効性のある「利益モデル(=利益を生むための技法)」を、網羅的にまとめていることがあげられます。

自力で利益モデルを一から検討するのは、とても骨が折れる仕事です。なぜならば、経営戦略のフレームワークの多くは、直接的・間接的に「利益」につながっており、打ち手を漏れなく考えるためには、次元の違う様々なアプローチ方法(フレームワーク)をすべて検討する必要があるからです。

本書では主要なモデルを「利益モデル」というかたちで全て洗い出しているため、本書に沿って自社の市場・商品をモデルにあてはめていくだけで、フレームワークを意識しなくても、自社に適合した「利益モデル」を検討することができます。新規事業検討や会社の事業モデル転換を検討する際に、可能性のある事業モデルにアタリをつけるのに大きな力を貸してくれるはずです。

2点目は、本書は実践的な解決策になることを意識して書かれていることがあげられます。紹介されている「利益モデル」は、「モデル」と言っているものの、理論的な内容に留まりません。理論では整理しにくいモデル、例えば、「強力なリーダーの企業家精神による利益モデル」をとりあげるなど現実的な利益向上策を教えてくれます。

加えて、「フェルミ推定」として知られるようになった数字による推論方法をいち早く紹介・推奨する一方で、紙の上の数字にとらわれずに生の顧客を知ることの重要性を説いたりと、単なる理論本とは違う側面を強く持っています。特に後者は主要メッセージとして、23のモデル解説のあらゆる場面でとりあげられています。筆者は「利益を生む仕組みは多種多様だが、企業がどこで利益を上げられるかを決めるのは顧客である」と言っており、著者の哲学を垣間見ることができます。

以上のような優れた点はありますが、本書では具体例とエッセンスを示すのみに留まっており、各モデルの十分な説明がされているわけではありません。自分で考えてその空白を埋めることが前提となっている本なのです。辞書的な使い方をするのであればそれで十分と言えますが、是非とも、自らの知識とするために、主人公と同じように、以下のような問いを自らに投げかけながら読むことをお勧めします。

・自社のビジネスはどの利益モデルを使っているか?

・競争相手のビジネスはどの利益モデルを使っているか?

・もっと利益を上げるために、現在の利益モデルを使って新たにできることはないか?

・新しい収益源をつかむために、新しい利益モデルを使えないか?

・自分の仕事はどのように利益と結び付いているか?利益と関係ない業務はないか?

・将来の事業計画は、どのようにして自社に利益をもたらすか?

・自社の計画の中に収益性を損なう可能性があり、中止すべきものはないか?

・自社が業界のなかで、新しい利益モデルをつくれないか?

以上

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