ハイボールの成功要因

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今、ハイボールが注目を浴びている。ハイボールとはウィスキーをソーダで割った飲み物で、「年配の飲み物」・「懐かしい」という印象を抱く方も多いと思う。

しかし最近は20代・30代の若者にまで広く浸透し、ブームを巻き起こしている。 ハイボールの成功要因について解説する。

 

 

 

 

そもそも、ウィスキーの消費量は長年減少トレンドが続いており、直近10年で半分以下まで落ち込んでいた。
しかし、現在ハイボールを提供する飲食店は、昨年までの数千店から28,000店までに拡大し、Googleで「ハイボールの作り方」を検索すると約70万件ものページがヒットする状況になっている。また個人消費も増加しており、サントリーの主力商品である「角瓶」は前年比115%の売上となった。

このようなハイボールの流行により、落ち込んでいたウィスキーの消費量が持ち直し、1998年以来11年ぶりに増産する見込みとなっている。

では、なぜハイボールがここまでのヒットに至ったのであろうか。メーカーのCMでもハイボールを全面的に押し出した戦略が見て取れるが、このブームは単なる広告宣伝による流行なのだろうか。

 

結論から言うと、以下の3点が組み合わさった結果、大きな成果が上がったと言える。

(1)大胆な発想によりウィスキーという飲み物のポジションを変えた
(2)そのために、業界のリーダーであるサントリーが地道なマーケティング活動を徹底した
(3)経済情勢・消費者意識の変化などの時流に乗ることができた


(1)大胆な発想によりウィスキーという飲み物のポジションを変えた


メーカーの消費者調査によると、ウィスキーのイメージは、「古臭い」「若い人は飲まない」「サラリーマンのウンチク」という内容に加え、「カッコつけて飲む」「敷居が高い」などの印象が強かった。
しかも、最近は飲みに行っても1軒目での食事で終わる事が多い傾向が強まっている。そうなると、1軒目の食事をする店にウィスキーは無く、飲む機会すら無い。このことから、若者のイメージが向上するチャンスすらなく、一般の消費者もウィスキーから遠ざかる結果となった。

そこで、サントリーは2つのアクションを起こしたと考えられる。

・ 食後酒・二軒目の酒ではなく、食中酒という位置づけに変える

・ 同時に、若い人や女性に受け入れやすい飲み物にする



アルコール度数を落とす事とソーダの爽快感により、食後酒と正反対である食中酒へシフトさせ、また、ソーダで割る事が若者に対する斬新感と飲みやすさを訴求することに成功した。

これにより、こだわり・ウンチクのヘビーユーザーに閉じていたウィスキーは、

全く新たな市場を開拓することができたと言える。

 

 

 

 

 

 

(2)地道なマーケティング活動を徹底した

プロダクト戦略においてウィスキーの特徴を変え、若者や女性をターゲットとした事は前述の通りだが、サントリーはプロダクト戦略以外におけるマーケティング活動も徹底している。

 

・プロモーション戦略


その一つがCMであり、以前は、男性をターゲットにした木村拓哉CMだったが、女優の小雪がハイボールを全面的に押し出すことで、大人の女性を訴求していることが挙げられる。

しかし、プロモーションにおける成功要因は、CMではなくCGMに注力した事と言える。

具体例として、ブロガー専用講習会「すごいハイボールの作り方」が挙げられる。サントリーはブロガーに限定した対話型の講習会を繰り返し開催した。ここで、味の体験とともに、作り方などブロガー独自のこだわりを訴求し、バイラル効果を生んだ。

その結果、ブロガーが火つけ役となり、サントリーとブロガー共催による「ハイボールナイト」というイベントが各地で開催された。そして最終的には「ハイボールの作り方」の動画や書き込みで、12万件もヒットする状況を作りだすまでに至ったのである。

・チャネル戦略


飲料業界では、サーバーの設置等により、小売だけでなく飲食店での自社商品導入が、チャネル戦略の王道であることはすでに一般化していると言える。

もちろん、今回のケースにおいても、ハイボールタワーというハイボール専用サーバーの設置など旧来のチャネル戦略を展開している。これにより、店によって濃さが異なるなどハイボールのブランドが崩壊することも抑止し、一石二鳥の効果もあげている。

しかし、今回のチャネル戦略では、他に2つの注目点が存在する。


一点目は対象飲食店を徹底的に「食事の店」にしたことが挙げられる。

本来目的である食中酒とすることを実現するため、従来の販路とは全く異なる飲食店への拡大を行った。

具体的には、アルコールすら置いていない「銀だこ(たこ焼き屋)」とのハイボール専門店の展開や、ウィスキーとは無縁の立ち飲み屋・焼き鳥屋、女性向けのバル(スペイン風のパブ)などに展開を行うことで、食中酒としてのポジションを確立した。

二点目として、飲食店がハイボールを推進したくなる環境を築いたことが挙げられる。

食中酒の競合商品は主にビールと酎ハイであるが、この商品からのスイッチを、店側が積極的に取り組む環境を整えた。

店から見ると、ビールの客単価は高いが利益率は高くなく、酎ハイは利益率が高いが単価は低い。今回は双方の「いいどころ取り」により店側が積極的にハイボールを推進する体制を築いた。

(店頭単価の例では、ビールが500円、ハイボール400円、酎ハイが300円。

原価率は焼酎とウィスキーが同等の模様。)

結果、ハイボールタワー導入店は飲料の2割~5割がハイボールになったという。

 

以上のようなサントリーの仕掛けにより、消費者と店が自ら主体となってハイボールを広め、加速度的に広がる効果を生み出したと言える。