グリー(GREE)の成功要因

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今、グリー(GREE)の成長が著しい。SNS運営最大手のmixiが伸び悩む中、会員数・収益ともに大きく成長しており、監査法人トーマツが10月に発表した国内IT業界における成長企業50社の2009年度ランキング「日本テクノロジー Fast50」では、グリーがトップとなった。
ここではGREEの成功要因について分析する。





会員数
















営業収益















このグリーの成長要因として特徴的であるのが「無料ゲーム」と言われており、中でも成長に寄与しているコンテンツが、釣りゲームの「釣りスタ!」と、ペット育成ゲーム「クリノッペ」である。


特に釣りゲームの人気は高い。ディーエヌエーが運営するモバゲータウンでも同様のゲームが人気を集めているが、ゲーム内容の類似性からグリーがディーエヌエーに対して訴訟を起こすに至っており、話題性・集客力を持ったコンテンツであると言える。


【例 ゲーム概要】


釣りゲーム

「釣りスタ」

様々な竿・仕掛け・餌を駆使ながら、オンライン上の川や池で魚を釣り上げるゲーム。釣り人としてのレベルアップに応じて、釣り場や魚が増えるなどの仕組みや、竿・仕掛けのレアアイテムなどが存在。

コミュニティ内でのコミュニケーション、全国順位表示、同じ釣り場にてリアルタイムで他人と釣りを競うなどのオンライン機能が充実。

ペットゲーム

「クリノッペ」

宇宙人のような生物をケータイ上で飼育するペットゲーム。

単に餌を上げたり遊んであげたりするだけでなく、様々なファッションアイテムによる着せ替え人形的要素や、ダンスやレアなアクションなどの面白い(かわいい)動きを楽しむ機能が充実。オンライン上で、他人のペットと触れ合うことで、ファッションやダンスを競う要素がある。

 


しかし、ゲームそのものはあくまで無料であり収益源ではない。収益を伸ばしている要因は、ゲームに付随したアイテムやオプションサービスの課金である。例えば、釣りゲームでは良い釣りざおやエサの購入であったり、ペットゲームではペットに着せる服などで課金するのである。

これだけを聞くと、「本当に課金されてでもゲームにハマる人はいるのか」、「無料というのは詐欺に近く、実際は課金されないと何もできない仕組みなのでは」など、疑問を持つ人も多いかと思う。

結論から先に言うと、課金されなくても地道にゲームを続ければ無料のまま楽しむことも問題ないが、ついつい課金アイテムを利用したくなる・思わずハマってしまう仕掛けが、用意されている。

では、どのような仕組みでここまでのユーザーを獲得し、課金するまでに至っているのであろうか。グリーのヒットゲームを事例にビジネスの仕組みを考察した結果、要点は以下の通りと考えられる。

(1)ターゲット ・既存のゲーム利用者に限らず、幅広い母数がターゲット

(2)Place
・ケータイに特化し、いつでもどこでも「常習的に」

(3)Price ・課金額はごく少額(支払に対する障壁が非常に低い)
しかし繰り返し払うような仕組み

(4)Promotion ・マス広告戦略による認知向上と無料という障壁の低さ
・他人や仲間との比較・コミュニケーションによる利用促進
・有料アイテムの無料使用など「試供品」の存在

(5)Product ・シンプルだが「常習性」が伴うゲーム内容
・ユーザーの「意欲」を掻き立てる内容
・上記要素を満たすコンテンツ(それが、釣り・ペット)

一般的には、肝心のプロダクトを優先的に説明するべきだが、無料ゲームについては結果的にプロダクト(ゲーム内容)が決まっていると考えられるため、この並びで説明したい。
以下に詳細を説明する。

(1)ターゲット
ゲーム業界においては、WiiやDSなどの任天堂の戦略がよく取り上げられ、「ゲーマー」では
ない幅広いユーザーを獲得した事例として知られているが、ケータイゲームはもっと広い層を
取り込んでいる。
DSやWiiはゲーム機やソフトを購入する必要があるが、ここではケータイを持っている人全て
がターゲットであり、しかも無料である。
これにより若者だけでなく、女性や社会人など幅広いターゲットを取りこむことができる。
(実際、グリーの顧客構成では、30代以上が40%以上を占めており、ゲームを積極提供してい
ないmixiのモバイルユーザーでは30代以上比率25%を大きく上回る。)

(2)Place
ケータイに特化したサービスを提供することで、前述の通りターゲットを幅広くしているだけ
でなく、常習的に使わせることを意識している。
空き時間や移動時間に短時間で楽しめる要素に加え、自分がプレイしていなくてもリアルタイ
ムで進行しているなど、常に気になる要素を盛り込むことで、すぐにケータイを開いてしまう
仕掛けを構築している。
例えば釣りゲームでは、特定の時間帯にしか釣れないケースや、オンライン上に数量限定で
放流された魚を先着で釣り上げる仕組みや、ペットゲームでは空腹・体調の変化や、レアな
リアクションをするなど、常にきにかけるような仕組みができており、ケータイというチャネ
ルを最大限に活かしていると言える。


(3)Price
課金アイテムの一つ一つは非常に低額であり、安いものであれば数十円から、最も高いもの
でも1,000円・2,000円といった価格帯である。
この手軽さが、課金に対するユーザー障壁を下げていることは間違い無い。

また、課金アイテムについても特徴的である。課金アイテムは必ずしも購入する必然性はなく、地道にプレイすれば無料で済む。(もしくは購入に必要な仮想マネーが貯まる)しかし、時間の短縮や技術の向上、コミュニケーション相手に対する見栄を満たすために「数百円程度で済むのであれば」というアイテムが多く、価格の安さと精神的な充足度のバランスから、ユーザーにとっては費用対効果が高く感じることができる仕組みとなっていると考えられる。

更に、どの課金アイテムも1回限りや回数限定であり、繰り返し買わなければならない点が、②Placeにて言及した常習性と相まって、高い収益を生んでいると言える。















 

(4) Promotion

ターゲットで触れたように、膨大な数の潜在ターゲットを対象とすることから、まずCMによる認知向上に力を入れている。そして一度サイトに来ると、無料コンテンツが多数あることから簡単にユーザーとなり、前述の常習性などから課金ユーザーへと変化する仕組みが、うまく作られている。

特に、無料ユーザーから有料化への利用促進の仕掛けは考え抜かれており、他者との比較(釣りゲームであれば順位表示・釣りコミュニティへの参加、ペットゲームであれば他人のペットと見比べられる場の存在等)により、無料のままでは恥ずかしいと感じるように設定されていたり、有料アイテムの無償プレゼントなど試供品的に便利さを体験できる仕掛けも多く、原価のかからないコンテンツビジネスの特徴を活かしたプロモーションを実施している。

更に、元来はSNSであった点を活かした招待機能も充実しており、知人の招待によりポイントや仮想マネーがもらえるなど、ユーザー間での顧客拡大にも力を入れている。

 

(5) Product

最後にプロダクトとしてゲームの機能・内容を説明する。

人気の釣りゲームやペットゲームの概要は前述の通りであるが、共通している点は以下の通りと言える。

 

・シンプルで誰でも楽しめるが、一筋縄ではいかない要素も存在

・短時間で楽しめるが常習性が出る内容

(リアルタイムで動いており、放置しておくと安心できない要素)

・成長意欲、コレクター意欲、他人に対する見栄など、心理的に働きかける仕組み

(釣りであれば、レベルアップ・大物が釣れるなどの成長要素、様々な魚をコンプリートするコレクター要素、コミュニティ内でのコレクター内容の比較や全体順位を上げるなどの競争や見栄の意欲)

・その意欲や常習性を、アイテム購入につなげやすい仕組み



全体を通じ見ると、ゲーム内容(Product)ありきではなく、上記の特徴を際立たせることができる内容を検討した結果がゲームであり、そのゲームの内容の一例が、釣りやペットであったと考えることができる。
したがって、無料ゲームのヒットを語る上では、「釣りゲームなんて面白いのだろうか?」、「ペットゲームより本当のペットが良いのでは?」という考え方は的を外れており、ゲームの内容自体ではなく、より多くの人とコミュニケーションや比較しながらリアルタイムでの成長を楽しむという意欲を満たし、現実世界と共通した楽しみを手軽に提供している点が、ヒットの要因ではないかと思われる。

 

最近の報告では、若い世代を中心に外食や飲み会などのコミュニケーションの場に出ず、競争や比較を避け、車も持たずに遊びにも行かない人が増加していると言われているが、決して不況の影響や、嗜好が内向的になったという要因だけではない。

彼らはネットを用いて、旧来のリアルの世界以上に、多くのコミュニケーションや競争・比較をし、充実した生活を送っている。そのためには消費しているのではないだろうか。

 

今後、様々なビジネス活動を行う上で、目に見える消費だけでなく、精神面や行動面での変化を意識した、新たな消費の仕組みを構築することが必要ではないだろうか。

 

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