激安ジーンズ

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「ユニクロ」のセカンドブランド「g.u.(ジーユー)」は、2009年3月、それまでの常識を覆す激安の990円ジーンズを発売し、業界に衝撃を与えました。

990円ジーンズは消費者からも支持を得て、発売当初から予想比2倍のペースで売れ続け、2009年のヒット商品番付で西の横綱にも選ばれ、販売目標を当初発表した50万本から100万本へ2倍に修正する結果となりました。

その破格の値段の背景とヒットの要因について探ります。

(1)「g.u.」について

 

ではまず「g.u.」というブランドについて説明します。

g.u.」とは、ファーストリテイリンググループの低価格カジュアルブランドを展開すべく2006年3月に立ちあがったブランドで、コンセプトとして以下の3点を挙げています。

・商品は市場最低価格 

・安心の品質 

・旬なデイリーファッションウェアを提供

ターゲットは20代後半から30代前半の若いファミリー層と明確に定めており、店舗展開はほとんどが郊外となっています。

「ユニクロ」が品質管理を強化し高品質化を進め、カシミヤ、レザーなど高級な素材を多く取り入れるようになった一方で、「g.u.」は絶対的な低価格の追求を行っており、高級素材などは扱わないなど、グループ内でのブランドの棲み分けをしています。

(2)990円ジーンズの発売

しかし、ブランドの立ち上げ当初は初年度100億円という目標を掲げたものの、実際は35億円にとどまり昨年まで営業赤字が続きました。

売上不振の理由を「これだという商品がなかった」と話すファーストリテイリングの柳井会長兼社長は、「g.u.」に対する抜本的なテコ入れを実施しました。

g.u.」は、当初は「ユニクロ」とは異なるモデルを模索し、商品を仕入れて売る小売スタイルをとっていましたが、「ユニクロ」と同様SPA(製造小売業。素材調達、製品企画、製造、流通、販売、販売促進、在庫管理といった全ての工程を一貫して自社で管理する方法。)を取り入れ、商品デザイン、生産も全て「ユニクロ」のバックアップを本格的に受けるように方針の転換を行いました。

そして、これまでの「ユニクロの2/3の価格」というコンセプトを「全商品の8割をユニクロの半額以下に」というコンセプトに変更しました。

そしてその方針転換の象徴的な存在となったのが、990円ジーンズです。

低価格が売りのユニクロでもジーンズの通常価格は3,990~4,990円で、まさに990円ジーンズは破格です。ではなぜ990円という破格の価格設定が可能になったのでしょうか。大きく以下の3点が挙げられます。

「ユニクロ」が築いてきたSPA体制

SPAを取り入れることにより、中間マージンを圧縮、在庫コストの低減が可能となりました。

素材調達や生産における絶対的コスト削減の追求

素材の調達や生産はもともと「ユニクロ」と取引のある、世界中の安価な取引先の中から価格重視で選び抜いて利用しています。例えば、990円ジーンズの生地は約100種類の候補の中から圧倒的に安くて質の良い中国製のものを選び、生産は工賃が安く関税のかからないカンボジアで行っています。

また、「ユニクロ」との規模の経済が効き、さらに安価な取引が可能となります。

人件費、地代家賃、販売促進費などの販売管理費の削減

g.u.」の坪当たり商品点数はユニクロの倍で、一方従業員は「ユニクロ」の半分です。そのために、たたみ陳列を少なく、つるし陳列を多くすることでスペースの削減や、商品をたたむ作業を減らすなど工夫がされています。

また、テレビCMは行わず、広告は店舗のあるエリアへの折り込みチラシのみで、広告宣伝費の圧縮等を行っています。

(3)競合他社の追随と990円ジーンズのヒットの要因

g.u」の990円ジーンズが好調なことを受け、流通各社はこぞってさらなる低価格なジーンズを発売しました。


◆流通各社が販売する格安ジーンズ一覧

販売者

ブランド名

価格

GOVリテイリング

g.u.

990円

セブン&アイホールディングス

ザ・プライス

980円

イオン

トップバリュー

880円

ダイエー

880円

西友

みんなのジーンズ

850円

ドンキホーテ

情熱価格

690円

各社ともジーンズの売上は好調で、価格の比較だけを見ると「g.u.」は価格が一番高く、早くも他社に追いつかれてしまったように見えますが、実はそうではなく、「g.u.」のひとり勝ちという構図になっています。

そのヒットの要因について2点挙げたいと思います。

クロスセリング(複数購入)が可能

他社の格安ジーンズは客寄せパンダ的な要素が強く、その他の商品展開は現段階で完成しておらず、「g.u.」の位置する超低価格衣料品業界への本格参入にはまだ踏み込めていないのが現状です。
それに対して「g.u.」は、約400点ある全
商品のうち半分以上が990円で、他にも490円Tシャツなど、一人当たりのトータルコーディネートは1,500円から実現が可能で、1万円あれば家族4人がオールコーディネートできるとし、全体としての安さを強調することで、競合を突き放しています。郊外店では、各店を転々とするのではなく、1店舗でトータルコーディネートができる点は、重要なポイントです。

デザイン性、品質の高さ

また、安いだけではない点が「g.u.」の魅力です。

商品企画は「ユニクロ」の商品企画チームの中に設置されたグループで実施され、品質管理は、もはや高品質となった「ユニクロ」の品質基準を守る生産管理チームが常に製品の品質やシルエットを改良しています。

チームにはユニクロの海外生産拠点で厳しく現地指導を行っている熟練アパレル職人で構成される匠チームも参画しています。

一定以上のデザイン性や品質も担保しつつ、低価格を徹底し、さらに、商品展開の幅の広さでユーザーのクロスセリングを図ってしっかりと収益を確保する戦略が「g.u.」の強みであると言えるでしょう。

(4)ファーストリテイリンググループの中の「g.u.

もともと低価格を売りに人気を集めてきた「ユニクロ」とのカニバリゼーションが懸念される中、ここまででファーストリテイリンググループが「g.u.」に対するテコ入れに熱心なのはなぜでしょうか。

主流になる低価格市場

近年は経済格差の進行や不景気などの要因により消費者全体に低価格志向が広まり、これまでサブ市場にすぎなかった低価格市場がむしろ主流となってきています。そのため、低価格市場の中でさらに細かなセグメンテーションを行い、より低価格路線を望む層をターゲットにポジショニングをしたのです。

高品質化を進めた「ユニクロ」

「ユニクロ」が高品質化を進め、カシミヤなどの高級素材を積極活用した結果、これまで価格重視で「ユニクロ」を買っていた層を取りこぼしてしまう危険があるからです。結果的に単純な価格面では、流通各社のPB商品などの方が安くなるケースが増えてきました。品質向上路線は成果を上げているものの、低価格市場も逃がしたくはない同社の戦略です。

国際ブランドとの競争激化

ファーストリテイリングは海外への進出を急激に進めており、さらなる拡大を目標として掲げています。

例えば、アメリカの「ギャップ」は、主力ブランド「ギャップ」が中間価格帯で、低価格帯の「オールド・ネイビー」、高価格の「バナナ・リパブリック」と3つのブランドを有しています。ファーストリテイリンググループがそうした世界の大手との競争力を身につけるためには、価格帯などの異なる別ブランドが必要になると考えた結果です。

(5)終わりに

g.u.」は、今秋990円ジーンズのカラーバリエーションを増やし22種類発売しました。また、新規店舗のさらなる拡大も順調に進んでいます。

しかし、不景気の波を受けて売上不振が続く衣料品業界でひとり勝ちをつづける「ユニクロ」との2枚看板として地位を確立し、今後も日本だけにとどまらず世界のファーストリテイリンググループのポジションをより強固なものにする礎となるためには、今後もさらなる飛躍が必要となるでしょう。

 

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