経営と所有の分離

経営と所有の分離とは、企業の経営者(=経営)と株主(=所有)を分離することです。これにより、優秀な経営陣によるスピーディな企業成長の促進と経営陣の独走・暴走のチェック&ストップを両立させることが可能になります。この構造や考え方を「経営と所有の分離」と言います。


具体的には、株主は適切な経営者を高額な報酬で選任し、また、株主自らは企業経営に対する客観的な評価者の立場に徹します。
経営と所有が分離されるべき理由を2点挙げます。

第一に、必ずしも「株主=優秀な経営者」ではないということが挙げられます。

さらに、同じ経営者であっても、社員が少ないベンチャー企業と何千人もの社員が働く大企業では求められるパフォーマンスがまったく異なるケースも考えられます。

このように、企業の成長ステージや取り巻く経営環境の変化によって「優秀な経営者」の定義は移りゆくものです。したがって、株主(=所有者)はいつでも企業経営を客観的に評価し、会社の価値を高めてくれる経営者を随時選任しなくてはなりません。

第二に、特別議決権を有する特定の株主が経営に携わった場合、企業が私物化されるリスクがあります。例えば、世襲制を引き、能力のない後継者に任せたり、ときには個人の資産と会社の資産を混同してしまうことも起こり得ます。

日本では株式の持ち合いやオーナー企業などローカル・ルールが横行していたために、こうした事象が数多く発生していました。「もの言わぬ株主」いわゆる白紙委任状を多く集めた経営者が事実上、企業を支配できたのです。

言うまでもなく、経営者の保身のための“甘えの構造”は癒着につながりかねません。欧米の経営者は株主からの厳しい目にさらされる中、会社の価値を高めるための切磋琢磨を繰り広げています。現在の日本にはグローバルに活躍できる優秀な経営者が少ないといわれていますが、このあたりにも理由があるかもしれません。

ただし、「経営と所有の分離」にはデメリットも存在します。ここでは、2つの事例をご紹介します。

1つ目は、株主が短期的な経済合理性を経営者に追求することによって、経営者が中長期的な視点でマネジメントが行えなくなるということがあります。こうした状況下では、経営者はすぐに結果を出すことを求められるため、先々を見据えた活動ができなくなります。

 

また、その逆で、中長期的には間違っていると分かっていながらも、短期利益が見込める施策をストップできないパターンも有り得ます。

2つ目としては、アーリーステージのベンチャー企業です。

ベンチャー企業が成功するには、刻一刻と変わる経営環境に応じた“スピーディな経営判断”が欠かせません。そのためには、経営者が創業者として一定割合の株式を「所有」することでスピーディーな意志決定をしていくことが重要なポイントといえるでしょう。