絶対評価と相対評価

人事制度の設計において、評価制度はその肝となります。評価制度と一口に言っても、検討すべき項目は沢山ありますが、その中でも「絶対評価と相対評価」は永遠の課題とも言えそうです。

高校生のころの成績表を思い出して見るとわかりやすいのですが、評価するとは「数学5、英語3、理科5」といったように点数もしくはランクをつけることです。その際の2本の分かれ道として絶対評価と相対評価があります。

「絶対評価が良い制度であり、相対評価は悪い制度である」というコメントが時々見られますが、この考え方は誤りです。どちらの制度にも長所と短所があります。

「みんな頑張ったのだから全員5にしてほしい」。これが絶対評価を推す側がよく口にする論理です。それは確かに素晴らしいことですが、一方で「みんな頑張りが足らなかったから全員1」という事態も、絶対評価においては覚悟する必要があります。

相対評価においては、「非常に頑張って事前に示されたガイドラインを達成したのに、もっと優れた人がいたために4しかもらえず、5に至らなかった」という場合があり、公正な評価ではないという言い方も出来ます。

しかしビジネスの世界での成否の大部分は相対的に決まります。喉が渇いてお茶を飲みたくなった消費者は、例えば伊右衛門とお~いお茶と綾鷹を比較して1本を選びます。これは相対評価です。絶対評価を行って、どれも素晴らしいからと言って3本全部を飲む人は極めて稀です。このように企業の業績が相対評価で決まるのなら、その従業員の評価も相対的に行うのが合理的という考え方も頷けます。例えばハーバード・ビジネススクールでは、相対評価で各科目の下10%に入った人は自動的にその科目は落第となり、落第科目が一定数を超えると強制退学となります。このように著名な組織でも意図的に相対評価を採用している例もあるのです。

定量的な評価がしやすい場合には絶対評価が適しています。例えば打率3割を超えたらボーナス1000万円といったケースです。一方で定量的な評価が困難な場合もあります。例えば「笑顔で誠実にお客様に接する」といった評価項目の場合です。こんな時は相対評価の出番です。例えば、上記項目においてAさんからEさんまでの5人を順位付けすることは、部下をよく観察している上司なら比較的容易でしょう。「定量なら絶対評価、定性なら相対評価」と言い切ることは危険ですが、ゆるやかな関係があることは事実でしょう。

絶対・相対の両方の長短を知り、さらに自社の状況に適合した評価基準を採用することが求められるわけです。