KJ法

KJ法とは、もともと文化人類学者の川喜田二郎(アルファベットがKJ)氏が実地調査(フィールドワーク)で得られた大量で雑多な資料を整理するために編み出した思考方法です。本来は川喜田氏が提唱する崇高な思考哲学を含んだ体系全体をKJ法と呼びます。が、それをビジネスに応用する上では、その一部である「似たカードを寄せ集めて複雑な情報を整理すること」をKJ法と呼ぶ場合が多いです。ここでは後者について解説します。

KJ法は1名で実施することも可能ですが、チームミーティング、研修、小集団活動といった場面で複数名で行われる場合が多いです。

まずはカードや大きい付箋にテーマとなる事柄を構成する様々な要素を記載します。例えば「優良企業とは?」がテーマの場合、「トヨタ自動車」、「M&A」、「キャッシュフロー経営」、「優秀な人材の採用」などと記載されたカードがずらりと並びます。カード作成の際にはブレーンストーミングなどの発想法を併用すると良いでしょう。

次に皆で話し合いながら「本質が共通しているカードたち」を寄せ集めてグループ化し、そのグループに名前をつけます。例えば「セブン・イレブンのドミナント戦略」というカードと「多角化失敗の多発」というカードを仲間とし、その本質である「選択と集中」という名前をグループ名としてつけます。

次にグループ同士で似たものを寄せ集め、大グループの名前をつけます。このようにして入れ子構造を作り上げて情報整理が完結します(図1)。



KJ法を行う際には、「表面的に似ている」からといってグループ化することを避けましょう。「本質が共通している」ことを基準にカードを寄せ集めなければなりません。例えば「セブンイレブン」「トヨタ」「ユニクロ」という3枚を寄せ集めて「会社」というグループ名をつけるのは価値の低い作品です。例えば、ユニクロを含むいくつかのカードをグループ化して「カリスマ経営者」と名付ける、セブンイレブンは「選択と集中」の中の1枚とする、トヨタは「大量生産による大幅コストダウン」という本質の1例とする、などの対応が適切です(図2)。



実はKJ法を通じて完成した「入れ子構造」の図はロジックツリーと全く同じ情報を含んでいます。図1で示したKJ法の作品をロジックツリーに変換した図3を参照して下さい。

最終的には全く同じ情報を保有するKJ法の完成図とロジックツリーですが、その形態の違いは思考プロセスに大きな影響を与えます。これをロジックツリー作成と対比したKJ法の長所・短所として解説しましょう。ポイントは2つあり、難易度と成果物の完成度です。

KJ法は皆でワイワイと楽しみながら似たカードを組み合わせて名前をつけてゆけば何らかの作品が大抵の場合は完成します。参加者が必ずしも論理的思考に長けている必要はありません。一方、ロジックツリーを作成する際に、「『優良企業とは』を骨太な3本柱に分解すると何になる?」を考えていていると、半日たっても良い案が浮かばないというケースは十分にあり得ます。KJ法は難易度が低く、ロジックツリーは難易度が高いと言えます。

次に成果物の完成度です。KJ法は最終的な姿の設計図無しに、部品ありきでモノを作ってゆく作業に似ています。そのような作り方をすると、出来た部品同士を組み合わせてもチグハグで今ひとつ噛み合わないという現象が起こりがちです。KJ法も同様であり、カードを集めて小グループ名をつけるまでは良いのですが、それらをさらに組み合わせた大グループの名前を順に読み上げて行くと、レベル感や表現のトーンが大きく異なるものの1セットとなってしまうケースが多いです。一方、ロジックツリー作成の場合はMECE(ダブリなく、漏れなく)を意識し、同じ列に並んだ言葉のレベル感を統一しならがら作成しますので、上述したような問題は起きにくくなります。まとめて言うと、KJ法は完成度が低く、ロジックツリーは完成度が高くなる傾向があると言えます。

集まったメンバーの資質や情報整理の目的などに照らし、KJ法が向いている場面なのかを確認してから活用するようにしましょう。例えば、成果物を作ることが目的ではなく、皆で楽しく作業を行いながら同じ思考プロセスを体験したり、今後の方針への納得感を形成する場面にKJ法が活用されたりします。