企業がエグゼクティブコーチングを依頼する際に、どのようなコーチング資格を持っているのか、コーチング以外の支援者としての実績(経営コンサルタント、研修講師、カウンセラーなど)、そしてビジネスパーソンとしてのキャリア(出身企業など)が判断基準になります。
一方で、それだけで良いコーチと残念なコーチを切り分けることはできません。なんといってもコーチングの内容そのものが決め手となります。以下に、両者の違いが歴然と判明する2つのポイントをあげましょう。
1.コーチとクラアイアンとが話をしている割合
良いコーチはセッションの大半をクライアントに話してもらいます。8割程度はクライアントが話をし、コーチが話す時間は2割程度が理想とされています。コラム執筆者の西田の個人的意見としては、これは9:1でも良いかもしれません。そして残念なコーチは、コーチ自身が話をしている時間帯が多くなります。
〇クライアントが80%の時間を話す
クライアントが多くの時間を使って自分の考えや感情を表現することが重要です。これにより、クライアントは自己の問題を深く探求し、自己認識を深めます。
コーチングは基本的に「クライアント中心」のプロセスであり、クライアントが主体的に解決策や洞察を得られるように導くことが目的です。
〇コーチが20%の時間を話す
コーチの役割は、主にクライアントに質問を投げかけたり、フィードバックを提供したり、プロセスを促進することです。
コーチは、クライアントが自分自身で答えを見つける手助けをするために、必要最小限の話をしながらも、クライアントに新たな視点を提供したり、重要な気づきを得られるようサポートします。
2.オープン質問かクローズド質問か
良いコーチの質問は短いオープン質問です。例えば以下のようなものです。
「そこから何を学びましたか?」
「どんなステップが必要ですか?」
「何を一番大切にしていますか?」
「最大のチャンスは何ですか?」
「このままで行くとどうなりますか?」
一方で残念なコーチは長いクローズド質問を多発します。なぜそうなるかというと、コーチが自分で問題を解決しようとし、コーチが持つ仮説をクライアントに問うという形になるからです。具体的には以下のようなものです。
「このプロジェクトはうまくいってないのがわかりました。きっとチームメンバーが協力してないからですよね?」
「職場のエンゲージメントサーベイ結果が悪いということですが、パワハラを行うような管理職が多数いるのでしょうか?」
「私は戦略の欠如に根本的問題があると感じているのですが、あなたもそう思いますか?」
ちなみにクローズド質問は絶対にしてはいけないわけではありません。例えばコーチングの中盤以降で、クライアントがとらわれている信念体系が明らかになった場合、そこにはずばりとクローズド質問で切り込む場合もあります。以下のようなものです。
「経営者は、常に意欲に溢れていなければならないのでしょうか?」
「どうしようか?と迷ってしまうことは、間違いなのでしょうか?」
「コーチとクラアイアンとが話をしている割合」と「オープン質問かクローズド質問か」の2つのポイントでコーチを見分け、明らかに問題があるようだと、コーチを変えてみるのも良い選択となります。