組織サーベイをきっかけとしたワークショップは、組織開発の王道です。一方で、多くの日本企業では、その運用に多大な改善の余地があります。大物の改善ポイントを2指摘させていただきます。
間違いパターン①:工場のカイゼンのように客観的数値分析のみで改善できると思い込んでいる
組織サーベイ結果を当該の部門にフィードバックすると、それを数値分析しようとするメンバーによく出会います。技術が売り物の会社だとなおさらのことです。
客観的数値分析が有効な場合もあります。歴史的にみれば、T型フォードの流れ作業の各工程にかかる時間をストップウォッチで測定し、どの工程にボトルネックがあるかを判定するといった分析は極めて有効でした。ボトルネックがある工程の人員を増やしたり、その作業を補助する補助工具を開発するなどで工場全体の効率を劇的に向上させることができました。
ここでステーシーマトリクスという概念を紹介しましょう。問題の本質は何か(What)と、どのように取り組むべきか(How)の2軸でマトリクス化したものです。数値分析が有効だった工場の流れ作業はシンプル課題です。では、組織における様々な課題はどうでしょうか。最低でもコンプレックス、場合によってはカオス課題です。それに対してシンプル課題で有効だった数値分析だけに頼るという手法がうまく行かないのは当然なのです。
では、そもそも何のためにサーベイをとるのでしょうか。我々は、それが本音の対話への入り口となるからだと考えています。これに気づいている会社であっても、別の罠にはまることがあります。それはガチ対話であれば何でも有意義だと思い込んでいることです。
間違いパターン②:ガチ対話であれば何でも有意義だと思い込んでいる
組織サーベイをきっかけに「ガチ対話」を行うと良いことは広く知れ渡ってきました。が、ガチ対話には全く異なる2種類があることを知っておく必要があります。
ひとつは自己防衛のためのガチ対話。自分の弱みは盾で守って決してさらけ出さず、理屈で相手を攻撃し合う対話です。もうひとつが、大切な思いを開示し合うガチ対話。自分の弱みに対してノーガードで本音を交換し合う対話です。
実は前者のガチ対話で「薪を燃やし尽くす」ことが、後者のガチ対話へと入ってゆくコツなのですが、この場面にはよく訓練された専門のファシリテーターが必要になります。