ミッション、ビジョン、バリュー(MVV)を経営者が作成して与えるではなく、現場や若手のメンバーを募り、内発的な動機付けをしながら作成するプロジェクトがさかんに行われています。わが社の組織開発の得意領域のひとつでもあります。典型的なワークショップの流れを解説します。
年表ワークで自社のDNAを振り返り、未来への動機づけを行う
まず事務局が社史年表のたたき台を作成します。そこには、新商品発売や、初のアメリカ拠点設置といった出来事と共に、様々な外部環境(リーマン危機など)が書き込まれます。そこにプロジェクトメンバーが自分にとっての重要な出来事を加筆して完成させ全員で眺めます。
・我々は誰なのか
・どこから来て、どこに行こうとしているのか
について、語り合います。
ステークホルダーインタビューで自社の盲点の窓を探る
次にプロジェクトメンバーが散らばって、様々なステークホルダーにインタビューします。その目的は自社の盲点の窓(自分ではわかっていないが、他者は知っている自分)を探ることです。これを把握しない限り、適切なMVVを作成することはできません。
右脳と左脳を行き来しながら言葉を紡ぐ
ここでいきなりMVVの文言を作ることはしません。年表ワークやステークホルダーインタビューでの気づきを、粘土をこねたり、風船を膨らまして張り付けたりして、右脳を使って形にします。次にそれを眺めながら左脳を使って言葉を紡ぎます。またその言葉を図画工作物にし、またそれを言葉にしたりして作品を完成させます。
MVV案を各自が作り、コピーライターが完成させる
ここまで来たら、MVVの文言の案をプロジェクトメンバー各自が作ることができます。また、そのMVVがあればわが社はどうなるのか、職場メンバーの行動がどう変わるのかのイメージもしてもらいます。
この場面にはコピーライターが同席します。というのは、プロジェクトメンバーは言葉を作るプロではありませんので、彼らの思いを材料に、言葉のプロがMVVの文言を仕上げます。コピーライターはメンバーから出てきたオリジナルの言葉を出来るだけ尊重し、それを整理整頓するだけの役割をにないます。全く新しいおしゃれなフレーズを生み出したりはしません。
3つの案からプロジェクトメンバーが選ぶ
会社のロゴを決める際に、デザイナはロゴの案を複数出します。それを役員会で1つに選択したりします。MVVの文言も同様です。コピーライターが例えば3つの案に絞り込み、プロジェクトメンバーが、どれが良いかとその理由を語り合います。最後は多数決でも良いですし、社長が決めても良いでしょう。
重要ポイントとしては、最後にMVVが決まるまでのプロセス(案はメンバーが出す、文言をコピーライターが整える、その後〇〇という手順で決定する)を、プロジェクトの最初からメンバーに伝えておくことです。「コピーライターが書きます」といった後出しじゃんけんは、プロジェクトメンバーのモチベーションを著しく削ぎます。
浸透施策をプロジェクトメンバーが考えて実行する(MVVはその作成よりも浸透が重要)
「MVVを作っておわり」の企業が多く、これでは会社は良くなりません。実はMVVを作ることよりも、浸透させることのほうが重要です。これもプロジェクトメンバーの役割であり、経営者がそれをになうと内発的な動機付けになりません。
手帳を作る、唱和する、なども間違いではありませんが、ワールドカフェなどの組織開発的な浸透施策が有効です。例えば主要な職場50か所から係長クラスの若手を招聘して50名+プロジェクトメンバー20名でのワールドカフェを本社で実施。そのあと、50個の職場で、ワールドカフェ経験者の係長クラスと、プロジェクトメンバーのペアが旗振り役となってワールドカフェを実施するなどが望ましいです。
MVVが定着してゆくにつれ、いずれは人事制度(評価制度)へのリンクなども検討すると良いでしょう。