書籍「組織が変われない3つの理由」
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組織が変われない3つの理由

「この組織をもっと活気づけたい」
「その結果、めざましい成果を手にしたい」
「厳しすぎるリーダーには人の気持ちを理解してほしい」
「優しすぎるリーダーにはもっと力強くチームをけん引してほしい」

トップの立場、ミドルの立場、メンバーの立場、そして人事や経営企画の立場。組織にかかわる全ての人たちは上記のような願いを抱いてきたはずです。そのために組織開発(OD)という手法が米国で生まれ、日本に導入されました。

組織開発はうまく進んでいるでしょうか?かならずしもYESと言えないのが大半の企業の実態かと思います。私は同僚たちと組織開発に悪戦苦闘する中で、具体的な「組織が変われない3つの理由」に気づき始めました。また、これらは自分たちの従来の常識を覆すようなコペルニクス的転回(物事の見方が180度変わってしまうことの比喩)でもありました。私が気づいた組織論に関する新しい視点( ≒地球が太陽の周りをまわっている)は以下の3点です。

1 人や組織が変わるためには対立は必須である。避けてはいけない
2 人間は過去と未来、そして空間の広がりを認識できない。意図的にそれらを知る必要がある
3 人は本質的には、内発的にしか動機づけできない。組織の方向性は当事者たちがつくるものである

この3つを主題に2023年12月にJMAMから「組織が変われない3つの理由」を出版しました。

内発的動機の重視

組織を変革するために、戦略コンサルティングファームに上質な戦略を作ってもらい、それを実行力のある現場のメンバーに引き渡す。そのような試みは失敗に終わる確率が高いです。現場の当事者意識が低いままでは、面従腹背が横行します。

唯一の方法は、内発的動機付けを尊重することです。まずは現場メンバーの当事者意識(危機感とチャンスの予感)を高めます。その具体的方法はこの本で触れています。目覚めた彼らは自分たちで戦略を作り始めます。それは、60点の戦略かもしれません。でも、自分たちで作った戦略は実行されます。実行の中で戦略の精度はブラッシュアップされると共に、成果の手ごたえを得始めたメンバーたちの当事者意識はさらに高まってゆき、右側の図の右上の★印のポイントに到達できるわけです。

時間と空間を超えた探求

成熟期に入った企業の多くは、そこから脱出できずに苦しんでいます。トップは「何とかしろ!」と発破をかけますが、どうにもなりません。なぜなら、時間軸の「今」、空間軸の「ここ」だけしか見ていないからです。これでは新たな成長期へのきっかけとなるアイデアが出てくるわけはありません。この書籍では時間軸と空間軸を広げるワークをご紹介しています。

上記のイラストは後者の決定版ワーク「ステークホルダーインタビュー」を図示したものです。いくつかのコツを踏まえて実施すれば、新たなチャンスが見つかると同時に、メンバーたちの当事者意識もさらに高まり、組織は各自に脱皮してゆくのです。

対立が力を生む

組織を変革しようとすると必ず対立が起きます。それを抑え込もうとするのがリーダーの自然な反応ですが、それでは変革が逆に止まってしまいます。安定の時代には見えている景色が誰も同じでした。そこに対立が起きるということは、片方(あるいは双方)が邪な動機を持っているわけで、これは忌むべきことです。

ところが今はVUCAの時代。置かれた環境や見えているものが異なります。双方ともが会社のために「良かれ」と思っていても、意見は正反対になり得ます。この健全な対立を無いことにすると変革がうまくゆかないのです。この書籍では対立を避けるのではなく、対立を力にするメソッドを扱っています。